Les miZenables

ブログをメモ帳と勘違いしている

Le Monde を読む(1) 番外編


なるほど、これは読解冒険記だ。
外国語という広大な土地を前にして、いかにして理解という名の文明を作っていくか。
その格闘の記録のようなものである。


1.今回のテーマ

フランス語だけに限らず、外国語の記事を読むというのは色々と不便がある。
語と語の対応自体は辞書を引けば一応は1出てくるが、フランス語で書かれたことばを日本語に対応できたところで、その日本語のことばの意味がわからなければ意味が走らない(簡単な話、専門用語などは"何語で言われても無差別"ということになるだろう)。

たとえば、以前このブログでは以下のように書いた。

"...malgré l’éclat envahissant de la Lune gibbeuse décroissante" は、「10日頃の月で空が明るいのにも関わらず」みたいな意味(だと思う)。この" la Lune gibbeuse décroissante"の訳に苦労したし、今もまだ納得がいっていない。この苦労話については回を改める。(引用: Le Mondeを読む(1) 2

今回は、この"la Lune gibbeuse décroissante"="十日頃の月"とした流れについて解説する。

…と思ってたんだけど。 ノートを見返してみると、この部分、正しくは"二十日頃の月"でした。3 この辺りについても今回説明します。

(04/11 追記)
…と思ってたんだけど。 確かに"二十日頃の月"と言えなくもないが、もっと適切な語がありそうとなった。 その語は、「有明の月」16日以降の月を示すことばである。


2. 月に関連する用語について

この項の内容
1. 月の満ち欠けについて
2. 月と地球と太陽の位置関係

まず基本的な月の名前について
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四角に囲まれた図は、地球から見た月の姿を簡単に表したもの。

月の名前(日本語) 英語 フランス語 コメント
新月 New Moon la Nouvelle Lune -
上弦の月 First Quarter - (En. )Quadtratureとも
満月 Full Moon la Plaine Lune -
下弦の月 Last Quarter - (En. )Quadtratureとも
  • ここでのポイントは、"la nouvelle Lune"、"la plaine Lune"の形容詞について。4
    • la Lune は女性名詞なので、形容詞も性数の一致が働く
      • nouvelle ← nouveau; 新しい。ジャン・リュック=ゴダールが有名な映画運動ヌーベル・バーグは"Nouvelle Vague"。ボージョレ・ヌーヴォーは"Beauljolais nouveau"、ボジョレー地方の新酒のような意味。
      • plaine ← plain ; 《古》平らな、無地の、1. 満ち潮; aller au plain: 満ち潮で座礁する。ある領域がぺたんと満ちているイメージアラン・ドロン主演の映画『太陽でいっぱい』の原題は《Plein de Soliel》。
  • いきなりnouvelle, nouveau という変わり種が出てきて恐縮だが、基本的に形容詞は名詞の性数と一致し(単数であれば)語尾に"e"を足す"

次に、三日月、"有明の月"に対応する部分の月を加えたもの。

有明の月 夜明けになっても残っている月。十六夜以降のものを示す。 (暦wikiより)

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月の名前(日本語) 英語 フランス語 コメント
三日月 crescent moon croissant de (la) Lune パンのクロワッサンはこれ
ターゲット.1 - la Lune gibbeuse ascendante 図の10-11時の位置にある月
ターゲット.2 - la Lune décroissante, gibbeuse descendante 図の7-8時の位置にある月
- - - 逆さまの三日月。今回のターゲットでないので省略

情報を整理した結果は、上の表のようになった。 仏和辞典ROYALによると、

gibbeux,-se (adj. )【学術】こぶの形をした、隆起した; こぶのある

とあるので、
図の7-8時、10-11時にある月のことを示していると思われる。 ascendant, descendantについては、それぞれ「上昇する」「下降する」というような意味だろう。
ということで、この二つの位置関係はわかった。

次は日本語を検討する。
この国には月をいろんな名前で呼ぶ。これを反映したのが以下の表。

月の名前(日本語) 英語 フランス語 コメント
三日月 crescent moon croissant de (la) Lune パンのクロワッサンはこれ
十日夜の月、十三夜月、小望月 - la Lune gibbeuse ascendante 図の10-11時の位置にある月
十六夜、立待月、居待月、寝待月、更待月。→有明の月?1 - la Lune décroissante, gibbeuse descendante 図の7-8時の位置にある月
- - - 図04-05時頃の位置にある月。今回のターゲットでないので省略

問題は、ターゲット.1、ターゲット.2の月を総称してどうするかという部分だった。
結局見つからなかったので(そもそも文章の全体を捉えるのが目的だったこともあり)、月齢を考えみて「二十日頃の月」とすることにした。
……したのだが、la gibbeuse Lune décroissantになっている時期 t は、

15<t<23(日)

な感じがするので、あまり適当な訳でもなかったかな、と反省している。

(04/11 追記)
有明の月が適当なようです。

3. 月が見えるということについて

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月は常にそこにあるものらしい。
というのは、「宇宙のどこかに」「地球の周りに」という意味だ。
僕らが肉眼で(à l'oeil nu)見ることができる月、というのは「地球の影からひょっこり顔を出した」部分に過ぎず、影の中に収まっていたなら見ることは叶わない。

4. おわりに

今回は、以下のような方針でコトに当たった。

  • まずその語の意味は何か

    • 単語の意味をひとつずつ拾っていき、そのイメージを掴む
    • 図を書くなどして立体的に捉える
    • ここで、対応する日本語がスマートに出てくれば御の字。
  • 対応する日本語がスマートに出てこない場合…

    • 関連する話題について日本語で検索する
    • 図に当てはめていく。
    • その上で、落とし所を探す(今回の例では、「二十日頃の月」などとする)

あるいは、「実際にその夜どの月が見えていたのか」まで探して書いても良いかもしれない。
(でもこれって、翻訳するなら、のレベルでは?)


(04/11 追記:)

  • 有明の月」がより適当ではとの意見をいただいた。問題があるとすれば、有明の月が「夜が明けかけても空に残っている月」とされているので、この部分が今回の流星群が深夜に現れる部分と競合しないかな、という点。
  • それとも「有明の月」ってのは「それだけ長い間空にある月」とかって意味なんだろうか(調べなさい)。

5. 参照

国立天文台 暦Wiki
- いろんなことがわかる。

使用している仏和辞典について :

ロワイヤル仏和中辞典

ロワイヤル仏和中辞典


  1. “一応は"としたのは、ことばというのは必ずしも一対一対応という風にはならないから。

  2. 記事の特定箇所を指定してリンクする方法はどうやるんだろう。

  3. この部分、折りたためるようにならないかな。