Les miZenables

ブログをメモ帳と勘違いしている

ベルリンの壁(2)

 

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歴史的にも大変意味のある作品。

僕がこの写真を撮ったのは、2009年。

ベルリン留学中のことだ。

 

今回からは、ちょっとこの絵について誰でも知っているようなことを、できるだけドイツ語を基本にして、解読していこうと思う。単語と文法が中心になるが、語学の勉強方法についても整理していくつもり。

 

外国語を勉強する上で一番の壁になるのは、「難しいに違いない」という思い込みだ。

じゃあ、この壁をどう回避するか。

「見ないふりをすればいい」。

 

たとえば、ドイツ語の名詞には三種類あり、格変化は定冠詞だけで12通りもある。

これをいきなり覚えろ、と言われるとそりゃあ「めんどくさい」となるわけだ。

そこで僕としては「じゃあ、覚えなくてもいいっすよ」と言いたい。

 

覚えなくても、辞書があれば意味は取れる。

辞書をいつまでも都度引くのが面倒になってきた時、あるいは「この文法使えるじゃん」となった時に、覚えれば良い。

必要に駆られて初めて身につくもの、というのが結構多いのだ。

 

もっとも、本場で誤解なく滑らかにコミュニケーション取りたい、というのであれば、文法事項の徹底、単語のニュアンスの違いに配慮するのは不可欠だ。

でも、これは最初からやらなくてもいい。

まずはストレス軽めに語学に親しみ、で後々ニュアンスの違いにフェティッシュを感じるようになってきたら、調べれば良い(これは必然的にやってくる)。

 

じゃ、今回の絵について。

 

タイトル:

英語 My God, Help Me to Survive This Deadly Love (Fraternal Kiss)

ドイツ語: Mein Gott, hilf mir, diese tödliche Liebe zu überleben (Bruderkuss)

 

作者: Dmitri Vrubel

 

タイトルの訳し方はとても難しい。

が、これもドイツ語の基本と辞書に従って訳していく。

  • Mein Gott : 
  • hilf mir : helfen(助ける, help)の命令形。ポイントは、後ろに "zu überleben"とzu不定しがあるところか。アクセス独和辞典のhelfenの項には、以下のようにある。

【zu不定詞と】Er hat ihr gholfen, das Gepäck zu tragen.彼は彼女が荷物を運ぶのを手伝った。 

ここで、"das Gepäck zu tragen"(彼が荷物を運ぶのを)は、zu不定詞の4格用法。目的語的に用いる。

従って、「主よ、diese tödliche Liebe をübelebenするのに力を貸してください」みたいな意味になる。

  • tödliche : 致命的な、(口)非常な、ものすごい(死ぬほど)
  • Liebe : (女性名詞)、愛
  • überleben : 生き延びる、長生きする。PONSのSchülerwörterbuch ENGLISCH(独英辞典)によると、surviveとのこと。

以上でヒントは出揃った。

「主よ、この死ぬほどの愛を永遠に」みたいな感じでどうでしょう。

微妙ですね。

中身を見ていきましょう。

 

 

内容:

 Leonid Brezhnev and Erich Honecker

レオニード・ブレジネフとエーリッヒ・ホーネッカーがキスしてる写真を元に描かれた。

絵画故、濃厚なキスをしているように見えるが、実際はベーゼといった感じ。

 

まずはwikipediaより。

 

Das 1990 entstandene Kunstwerk zeigt Leonid Breschnew und Erich Honecker beim Bruderkuss und ist die Reproduktion einer Fotografie von 1979, aufgenommen während der Feierlichkeiten zum 30. 

 

一見すると、意味の全くわからない文章ではあるが、ちょっとずつ読んでいこうと思う。

 

  • zeigen 見せる、教える、指し示す、現れる、…に描かれている
    • Das Foto zeigt unsere Urgroßeltern. : その写真には私たちの曽祖父母が写っています。
    • ⇨ die Zeichnung : スケッチ、③(小説・映画などの)描写・叙述

 

  • beim :
    • 前置詞bei と定冠詞demの融合系。ここでの意味は、「…の時に」
      • 前置詞と定冠詞(不定冠詞も)がこういう風にくっつくことがある。が、今回は文法事項としてはパス。
      • 前置詞beiは、以下のような意味を持つ。
        • (空間)…の近くに(で)
        • (人などのいる所) …のもとに(で)
        • (同時) …の際に
        • ☆3格支配

 

個人的には、語学をやる際に重要なのは「細かいところに囚われない」ということだと思っている。今回のbeimはよく出てくるし、前置詞+冠詞もよく出てくる。いくつも文章を読んでいく内に、気になる時が来ると思うので、その時に覚えれば良い。

 

  • Kunstwerk = Kunst + Werk
    • 芸術+作品
    • ドイツ語は二つ以上の単語をくっつける時、後ろの性になる。
    • das Werk(中性名詞)なので、die Kunstwerkも中性名詞。

 

  • entstandene : entstanden(形容詞)
    • 元の動詞はentstehen(生じる)。これが過去分詞系になるとentstandenとなり、形容詞として使えるようにもなる。
    • 注目すべきは、語尾のe。

 

[文法解説.1 定冠詞(類)+ 形容詞 + 名詞の格変化]

  • ドイツ語では、定冠詞 + 形容詞 + 名詞が並ぶ時、以下の表に変化する。

 

男性名詞

女性名詞

中性名詞

1格(…が)

der gute Mann

die gute Frau

das gute Kind

2格(…の)

des gutes Manns

der guter Frau

des gutes Kindes

3格(…に)

dem guten Mann

der guter Frau

dem guten Kind

4格(…を)

den guten Mann

die gute Frau

das gute Kind

 

上の表から、”Das 1990 entstandene Kunstwerke” は1格か4格。

つまり、「1990年に生じた芸術作品”が”」なのか「1990年に生じた芸術作品”を”」なのが争点となる。

反則的ではあるが、常識を使う。前者だろう。

 

 

「1990年に生じた芸術作品が示されているのは、…」である。ふむ。

 

 

[翻訳のテクニック]

無生物主語っぽい文章の場合、一概に1格だからといって、「…が」にこだわると日本語がぎくしゃくすることがある。そこで、

「…が描かれているこの芸術作品が成立したのは、1990年」という風にする。

 

今回はここまで。

次回以降は、今回と同じように、単語・文法を解説しながら、Dmitri Wrubel氏のインタビューとかも見ていければと思っている。