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映画『Death Note/デスノート』(ハリウッド版)を見た話

見た日: 07月08日(土)

ハリウッド版『Death Note/デスノート』は、2017年にアメリカで製作されたスーパーナチュラル・スリラー映画。原作は世界的な人気を博している同名漫画で、日本でも映画化されたことがある。


Death Note | Teaser [HD] | Netflix

あらすじ

主人公ライト・ターナーはハイスクールの学生。頭が良く、他人の宿題を代行してはいるが、これといって友人もなく、陰気な感じに暮らしている。線路近くの家に父と二人暮らしをしていて、母を殺した犯人が野放しであること、そのことに行動を起こさない父に苛立ちを覚えている。

ある日、彼は奇妙なノートを拾う。それは名前を書くことで人を殺すことのできる超常のノート、デスノートであった。

早速、試験的に校内のいじめっ子を殺害するライト。そのノートの効力を確信した彼は、母の仇を討つことをきっかけに、偏った正義感を増長させ、世界に秩序をもたらす神となることを決意するのだった。

この映画の面白かった点

  1. デスノートのおかげで可愛い彼女ができました
    原作漫画の月青年が、同世代に比べて大人びている印象だったのに対して、ナット・ウルフ演じるライト・ターナーは等身大の青年。
    彼はデスノートを手に入れてすぐ、チアリーダーの女の子にその秘密を明かしてしまう。ノートの効力に半信半疑の彼女に、実際に人を殺して見せることで、彼女の信頼を勝ち取り、二人で新世界の神になろうと言わせしめる。
    そっから先は、若さに任せてイチャコラし続けるのだが、これはもう仕方ないじゃん……。

  2. 感情豊かな探偵と助手の苦悩
    今作のLは感情表現が豊か。部下の死に狼狽し、怒りに燃えて自らライトを撃たんとするところは意外だった。確か原作漫画でも、人の死にちゃんと感じるところのあるひとだったように思うので、そういった倫理観・道義心が強調されて演じられているのはまぁ…。
    あの独特の姿勢の悪さも再現されており、にも関わらず颯爽と雨のダウンストリートを駆ける姿は、ウサイン・ボルトを彷彿とさせる。 さすが世界的な探偵として養成されてきただけある。

  3. 異常に怖いリューク
    リュークがとにかく怖い。まず顔が怖すぎるし、キュートさがほとんどない。目が光る。目が光るのは怖い。
    モーション・キャプチャーと声優をウィレム・デフォーがやっているわけだが、理想的な死神だ。「気がついたらそこにいる」という気味の悪さも最高。
    もっとリュークが見たかった。 (深夜営業のカフェにライトを迎えに来るリュークの絵面はグッと来る。雨に濡れた死神は何も言わず、入り口にひっそりと立っている……)

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まとめ

この映画と原作は切り離して見た方が良い。かなり換骨奪胎されているので、別物として見た方が楽しめるだろう。

登場人物は、それぞれに信念を持って薫陶するものの、超人的な頭脳を発揮するわけでもない(それでも、ライト・ターナーはトリックをはりめぐらせるし、警察の情報を盗み見できる能力を持つことが示唆されもする)。
死の操作が原作よりも自由度のあるものになっており、「運命に任せる」と言った使い方ができるのも新鮮だ(字幕「ルールが多過ぎる」)。

監督に拠ると、この作品のコンセプトは"moral relevance"とのこと。「正義とは何か」と訳されているが、道徳的な関わり(relevanceには妥当性の意味もあるので、こちらを取ると「正義とは何か」と言える)といったことか。

原作では、月君の行動原理が「犯罪のない世の中を作る(→新世界の神になる)」だったと思うが、これはライト・ターナーについても同じだ。ただし、その手段として犯罪行為を続けていくところが、矛盾としてLに指摘されることになる……といった構造も本作でも踏襲されている。

そう言った点からすると、原作に忠実に作っていると言えなくもないものの、換骨奪胎されているように感じるのは、ひとえに登場人物の未熟さ(等身大な部分)が強調されているからだろう、と思う。 確かに、あの歳頃の青年がそういうノートを手に入れたとしても、原作みたいにうまくはいかないだろう。
青さを楽しめ。

最後に、この映画のとっておきのシーンは、予告編にもあるのだが、エージェント達がビルの屋上から飛び降りるシーン。あの美しさは素晴らしい。デスノートによる死の操作が、何か印象的な調子で描かれている。 その他の死は、大抵スプラッタで悪趣味なので、その点覚悟が必要かもしれない。