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小説『その女アレックス』が面白かった話

ミステリをベースに、古典文学のような厚みを添えた一冊

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

『その女アレックス』(2014年初版; 原題: Alex)はフランス発の犯罪小説。ヴェルーヴェン警部シリーズのうちの一作で、日本でも本屋大賞このミステリーがすごい!などを受賞している作品でもある。

著者のピエール・ルメートル(Pierre Lemaitre)は、脚本家・小説家。文壇に登場したのは55歳からと遅咲きだが、フランスをはじめとして、世界でも高い評価を得ている。

本作は、三部構成となっており、それぞれの境界で事件が大きく動くことになる。

第一部冒頭では、ある女性(アレックス)の誘拐事件が起こり、ヴェルーヴェン警部をはじめとする四人組が調査に乗り出す。物語は基本的に、被害者女性の視点と、警察の視点が交代する形で進行する。

しかしながら、彼らの調査が進歩するにしたがって、物語は予想だにしていない展開を見始める。主人公アレックスの方の人生にも驚きがあり、最後まで読者を話さない構成になっていると感じた。

以下ネタバレになりかねないので注意 (でもこっちの方が読んで欲しい)

読み終わって見ると、確かに「犯罪小説」とジャンル打ちするのが良さそうだなと思った。三部構成にしたのには意味があって、僕はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』とか『罪と罰』なんかを想像した。

そういう点から考えると、古典文学の伝統を踏まえているという点で、他のミステリとは違うと色めきたつのもわかる。奇抜なトリックで魅了するのではなく、人間を書いているというか、ドストエフスキー作品などに見られる「人間の魂の輝き」みたいなものを、この作品も描いているからだ。

これはアレックスが人間性を再生する物語だし、警察の四人組は、正義の使者としてそれを支える者たちなのだ。

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)