『ナイト&デイ』(2010年)
最近暗いニュースが続く。ゴールデンウィークももう終わりだ。明日から働かなければならない……そんなと時にも映画は見る。一人暮らしだからね、映画をつけるとそこには登場人物が必ずと言って良いほど会話をしている。一人じゃないって気がします。
とはいえ、NetflixもAmazon Primeでも、暗そうな話ばかり目についてしまう。連続ドラマしかり、映画しかり、アニメしかり。殺したり殺されたり、シリアスなものばかり目につく。そして何より、この「暗そうな」というのは天気の話でもある。
ただでさえ、自宅にいろと言われて苦しんでいるのだ。もともと出不精な人間ではあるんだけど、自らの意思とあるいは自らの怠惰さで家を出ない、というのと、「外出を自粛せよ」という空気の中でそうせざるを得ないのとではわけが違う。こういう外的な圧力を受け入れがちなタイプのくせに、心根のところでは反抗しているから、結果としてとても消耗することになる。
そこに加えて、明日からは仕事だ。「不要不急の外出は控えろ」と「雇われているからには出社しろ」という、同じ社会に属する言説の、全く異なる指示に、ぼくは矛盾を感じて、もう一段、鬱を暗くする。
飲むしかありませんね、お酒。
さて、映画を見る理由にはいくつもあるけど、その中の一つに「青い空が見たいから」というのがある。「良い天気が見たい」「明るい映画が見たい」という一方で、「けれどもアクション要素もほしい」となると、難しい。
そんなニーズにお応えする作品がこちら、『ナイト&デイ』です。もう何度も見ました。何度も見ましょう。
ミステリアスな雰囲気があるくせに笑顔がチャーミングなトム・クルーズが演じるロイと、平凡な女性ジェーン(妹の結婚式に父の形見のGTOを完成させようという夢がある)が空港で出会ったところから、ラブロマンスが始まるか……と思いきや、
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あらすじ
初登場第1位!トム・クルーズ×キャメロン・ディアスで放つ極上スタイリッシュ・スパイアクション! ワイルドな誘惑。スイートな衝撃。 平凡な女性ジューンが空港で出会った、とびきり笑顔が素敵な男性ロイ。しかし、恋の予感は一瞬にして怒涛のパニックへと変わり、ジューンは嵐のような大事件に巻き込まれていく。ミステリアスなロイの背後には、巨大な陰謀の影が…。しかも、この予測不能で危険なロイと行動を共にすることだけが、ジューンに残された生き延びる方法だった―。 (AmazonPrimeから)
作品の魅力など
- トム・クルーズとキャメロン・ディアスについて トム・クルーズという役者はいろんな顔を持つ。それを一挙に楽しめるのは『オール・ユー・ニード・イズ・キル』だが、笑顔を封印してシリアスな顔も楽しめるという点では、『コラテラル』を推したい。もちろん忘れてはいけないのは、『ミッション・インポッシブル』シリーズの主役だ。あれは随分若い時からやっているシリーズものなので、今になって一作目を見たりすると「若いなぁ」と感動する。
今作のロイ(トム・クルーズ)はチャーミングな微笑みが魅力のエージェントだ。彼の行動は予測がつかないし、それに翻弄される様がジェーンを通してよく伝わってくる。
このキャメロン・ディアス演じるジェーンという女性が魅力的なのなんのって。基本的に明るくて、元気。ロイが平凡な人間にとって予測不可能なことばかりする一方、ジェーンだって予測不可能なことを色々としでかす。ロイ一人だったら、スパイ物として固まってたと思うんですけど、ジェーンの存在によって、これが日常感覚みたいのも織り交ぜられているので、見ていて楽しい。
さて、そんなジェーンは、平凡な女性と書いているけれど、そこまで平凡でもない。バイクに乗りながら後ろの敵対者を撃つなんて芸当、ふつうじゃできませんよ。できませんよね? そこからはじまり、ジェーンには終始驚かせっぱなしだった。
運命的な出会いではなかったのかもしれない。エージェント側の都合で、彼の問題に巻き込まれただけかもしれない。全ては仕組まれていたのだ。でも、だからなんだって言うんだ? 好きになってしまったんだ、ということで起こされる行動の数々。ジェーンはほんとうに良いヒロインなんですよ。
「”いつか(someday)”は危険な言葉だ。それは永遠に来ないことと同じだから」と、自分の夢を語るシーンでロイは言う。そこにはエージェントとしての彼が、心に抱きながら、きっと諦めていたのだろうものだ。ひとつの任務が終わるとき、彼は一体何を考えるのだろう。また別の任務に就くのだろうか。でも一体いつまで……? それはエージェントものの宿命だし、他のスパイものであれば、あまり焦点が当てられないポイントだ。でも、この作品にはジェーンがいた。普通の女性なのに、このスパイアクションに付き添ってきてくれて、戦い抜いてきたひと。カメラはそこに注目する。 ありがとう! って感じだ。
どこまでも青い空の下、GTOが賭けていくシーンで映画は終わる。清々しく、爽やかな作品だ。疲れた心に馴染みやすいし、そういう映画がいつでも見られるというのはひとつの幸せでもある。