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ドイツ語 接続法 とは

ドイツ語の動詞にある3つのモード

前提として、ドイツ語の動詞には3つのモードがある。

  1. 事実を述べる 直説法
  2. 要求として述べる 命令法
  3. 想像として述べる 接続法

今回は、接続法に注目する。

接続法とは何か

「考えられること」「願わしいこと」「想像可能なこと」というように、ある事実をあくまでも話者の視点から主観的に述べるモード。

主観的に述べることになるので、これが登場すると文章は華やかになる。味わい深くなる。ここは文法書の中でも最も詩情あふれる部分であり、例文を読んでいるだけでも楽しくなれる項目だ。

改訂ドイツ広文典によると、

接続法は願望もしくは想像をあらわし、従って文の内容となっていることがらと現実との一致について、話し手は責任を負わない話法である。すなわち、接続法は願望、要求、禁止、命令、蓋然、可能、非蓋然、不可能、非事実などを表現する。(p.384)

2つの方式

基本的には

  1. 事実性が保留されている場合 => 接続法I式
  2. 非現実を仮定している場合 => 接続法II式
  3. が用いられる。

ただし、接続法I式を用いるべきところでも、活用の都合上、接続法II式が用いられることもある。

接続法I式の活用が直説法と同じ形になることもあり、その場合は、接続法であることを強調するために、接続法II式を採用するのだ。

それぞれの由来について

  1. 接続法II式
    • 現在、現在完了、未来、未来完了から来ている形態(前掲書)
    • 現在形接続法とも言うが、これは必ずしも現在の事柄を示す、というわけではない点に注意。
  2. 接続法II式
    • 過去、過去完了、それから未来、未来完了の助動詞をwürdeに代えた形から来ている形態(前掲書)
    • 過去形接続法とも言うが、これも必ずしも過去の事柄を示す、というわけではない点に注意。

接続法の実例

直接法と接続法の違いについては、間接引用文を見るとよくわかる。

例:「 …と○○が言っていました」

  1. Peter sagt, “”Ich kaufe das Buch.””
    • 直説法。 Peterは「僕はその本を買うよ」と言った。
  2. Peter sagt, dass er das Buch kauft.
    1. 直説法。Peterはその本を買うと言った。
    2. 接続詞dassを用いて、Peterの発言が間接的に引用されている。
    3. 「本を買う(das Buch kauft)」という発言を事実として伝えている。
  3. Peter sagt, er kaufte das Buch.
    • 接続法が用いられている。「その本を買うとPeterは言っている」。
    • 注目すべきは、”kaufte”。見慣れない活用をしている。
    • この活用から「接続法」と判断し、
    • 「この伝達内容には事実としての保証はない」んだなと辺りをつける。
    • ひたとえば、Peterがそう言っていたと他者から聞いた場合など。
    • 間接引用部分の事実性に関し、話者は責任を負っていないことになる。
  4. Wenn er kommt, können wir Mah-Jongg spielen .
    • 彼が来れば、麻雀ができる(直説法)
    • ある条件(er kommt)が満たされれば、ある事態(wir Mah-Jongg spielen können)が成立する、と述べる条件文。
  5. Wenn er käme, können wir Mah-Jongg spielen^.
    • 彼が来 ~ていれば~、麻雀ができた ~のに~ (接続法)
    • 上の訳例では、「来-て-いれ-ば」と、間にワンクッションある点に反映されている。
    • 「(彼は来られないことになったのだが)もし来ていれば、麻雀ができるところだったのになあ」という解釈。
    • ここでは現実の事態とは反対の事柄 が想定され、述べられている。

詳しい例文については、また記事を改めたいと思う。

まとめ: 接続法とは

接続法とは、話者の視点から主観的に述べる話法のことだ。 ここでポイントとなるのは、主観的=事実とは限らない、という点。「事実とは限らない」からと言って、必ずしも「嘘である」というわけでもない点に注意したい。

接続法には、二種類の方式がある。 1. 接続法 I 式 * 事実かどうかはわからない(留保されている) 2. 接続法 II式 * 事実に反した事柄を述べる

参考文献

特にこの参考書は素晴らしい。コンパクトかつ重厚。解説が詳しく、知的好奇心を刺激されるだけでなく、掲載されている例文も格調が高いから、読んでいて楽しい。

    たとえば、
  • Die Gnade Gottes sei mit uns allen! 「神の恵がわれらすべてにあらんことを」
  • Der Mensch lerne dienen und gehorchen; denn nur wer dienen und gehorchen gelernt hat, kann befehlen. 「人間は奉仕し、服従することを学べ。なぜならば奉仕し服従することを学んだものだけが命令することができる」
  • Wenn dem Mond zu denken vergönnt wäre, so würde er wohl die Erde für seinen Diener halten.「もし月に考えることが与えられていたら、月はたぶん地球を自分の召使と思うであろう」
  • などなど……