005本目: 『アフター・アース』(2013年)
久しぶりにこういう父と息子の物語を見た。「親と子」というよりは、「父と息子」と書いた方が正しい気がする。古典的かつ道徳的なSF映画。1000年以上後の地球が主な舞台になってはいるが、どちらかというと父と息子の絆とか信頼(でもそれは所与のものでなく、育っていくもの)、あるいは少年の成長といったものがメインテーマな気がする。
- 発売日: 2013/11/26
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あらすじ
2025年、地球の自然破壊が深刻になってしまったため、人類は別の惑星ノヴァ・プライムに移住せざるを得なくなった。その惑星には先住民がおり、人類を抹殺するために「アーサ」という巨大生物を作り上げる。この生物は基本的に盲目だが、人間の恐怖心(フェロモン)を嗅ぎ分け、攻撃をしかけてくる。人類はまたも滅亡の危機に瀕する。
サイファ・レイジ(演: ウィル・スミス)は、恐怖心を消す技術「ゴースト」を会得したことで、この圧倒的な怪物に対抗することができる。その技術を活かして、多くの人々を救ってきたことから、伝説級のレンジャーとして語り継がれる彼は、部下からの信頼も篤く、最高司令官としてのポストもある。
そんな父親を持つレンジャー部隊候補生の主人公キタイ・レイジ(演: ジェイデン・スミス)は、思春期真っ只中。成績は優秀だが、幼少期に姉をアーサに殺されたトラウマから、恐怖心を払拭できず、レンジャー試験に合格できない。自分への苛立ちと、父への反発、姉の死のトラウマと何かと心が忙しい。
サイファ・レイジは引退を考えており、妻の口添えもあって、最後の任務に息子を同行させる。この時のキタイくんはとても嬉しそうで、すごく少年かわいい。引退前の最後の任務は、訓練ということもあり、それに使うべき宇宙船内にはアーサが拘束されている。
道中、宇宙船は事故に遭い、とある惑星への不時着を余儀なくされる。そこは1000年以上前に人類が放棄してきた、地球だった。ワープの無理がたたって船体は空中分解。生存者はレイジ親子のみ。しかも父のサイファ・レイジは重症を負い、身動きひとつできない状況。生き残るには、100km先に墜落した船体後部にある通信機を使って、救難信号を送るしかない。父は苦渋の決断を強いられ、息子に通信機を目指すよう命令する。
作品情報
監督は『シックス・センス』『サイン』『スプリット』などのM・ナイト・シャマラン。主演はジェイデン・スミスとウィル・スミスの親子。2013年のSF映画。上映時間は100分と短い。
魅力
孤立無縁な環境下で、主人公が支えにするのはまず父の声だ。伝説級のレンジャーでもある父のアドバイスは常に的確だし、こういう修羅場でも臆することはない。しかし、息子は当然反発するし、父の制止を振り切って無茶な行動に出たりもする。その結果、生命線でもあった通信手段が故障してしまい、父は息子の声を聞くことはできるが、息子は父の声を聞くことができなくなってしまう。そこからの展開が熱い。
恐怖心を嗅ぎ分けて迫ってくる化け物と、それに対抗する技法としての「ゴースト」。ここに浮かび上がるのは、生存への意志であり、また恐怖心はまやかしであるという思想だ。「未来への不安が恐怖心を作り出す」「危険は実在するが、恐怖は自分次第だ」というテーゼは、「今ここ」に意識を集中させる禅とか瞑想とかいうものを連想させる。アドレナリンとかフェロモンとかの生化学的なものと、現象学的なものの融合という点で、このあたりはとても興味深かった。
ただやはり、危機を経て、父と息子が重なる瞬間があり、そういう意味での文脈がやはり強い。あとは1000年後の地球が構築されているので、美術的な面でも楽しめる。