不条理について: 『L'Étranger』(Albert Camus)を読んで(1)
Albert Camus のL'Étrangerを読んでいる。
L'Etranger (Collection Folio, 2)
- 作者: Albert Camus
- 出版社/メーカー: Gallimard
- 発売日: 1990/10/01
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- 作者: カミュ,窪田啓作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/07/02
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昼休みの時間ごとに一節を読むペースで、とうとう第1章を読み終えた。「きょう、ママンが死んだ」という訳で有名なAujourd'hui, maman est morte.
は、冒頭の一行目。さすがカミュは書き出しが上手。
作品について
ちなみに上の文章は Ou peut-être hier, je ne sais pas. ... (⇨あるいは昨日のことかもしれないが、わからない。)
と続く。
第1章は、母の葬儀に赴くところから物語がはじまり、主人公のMeursaultがアラブ人を射殺するところで終了する。
舞台は現在でいうとアルジェリアのアルジェ。
作者のAlbert Camusはフランス領アルジェ出身。この作品が発表された1942年当時のはフランス領だったが、1962年に独立している。
作品の中では、とにかく日差しが高く暑い日が続く。この小説は、Meursaultの一人称で書かれているが、とにかく至るところで気温の高さに言及される。快適な環境がほとんど現れない。日本に住んでいると(それがたとえば北海道の札幌であっても)、こういう暑さでぼうとなる感覚というのはわかる気がするが、でもきっとアルジェの暑さはまた種類が違うのだろう。
不条理とは何か
カミュはよく不条理の作家とされるが、この意味についてだいぶ思い違いをしていたのではないか、ってのが今日の発見。
それまでは「合理性を欠いた」という意味かと思っていたのだが、そもそもこの合理性は何によって担保されうるか、というところが焦点になっているのかもしれない。
この点については、Meursaultがやたらと「どっちでもいいよ」「同じことだ」というような独白をしていることが証言として提示できると思う。たとえば、Marieという女性にプロポーズしてと言われた時にも、上司に「パリに転勤してもらう」というようなことを言われても、「どっちでもよかった」と言ってしまうところなど。
このように、Meursaultは、人生を大きく左右する事柄について「どっちでもいいよ」を返す。それは何も、大きすぎるメリットとデメリットを天秤を前にして、決定を下すことに恐れをなしているだとか、そういう理由からではない。母の死も含めて、「普通の」感性では、情動が揺すぶられるようなところで、彼は動じないのである。
これをして、条理が働いていない⇨不条理、とするならば、頷ける部分があるのも事実だ。
「きょう、ママンが死んだ」についで有名なのは、彼が殺人の動機を聞かれて「太陽がまぶしかったから」と答えるシーンである。これは法廷でのシーンとのことなので、まだそこまで読めていないから明言はできないが、今までのところから推察するに、日差しが高かったからというのはあながち間違いではない。
とすれば、彼の尺度は(比較的)普遍的な倫理とかそういうものにはなく、l'absurede(不条理な)の方にある。
ちなみに、この点についてはおそらく『Le mythe de Sisyphe』の方を読めばもっと話を膨らませることができると思う。
Le Mythe de Sisyphe (Collection Folio / Essais)
- 作者: Albert Camus
- 出版社/メーカー: Editions Gallimard
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今後の展望について
そもそも、absurdeという単語には、「不条理な、不合理な、非常識な、ばかげた」というような訳語が当てられるらしい。ただ、この語の圏域が思ったよりも広いという点が発見であり、気になるポイントで、加えて言えば他で研究している(したい)テーマにも関わってくるところなので、いやもうどんどん読んでいきましょうねって感じ。
カミュの文章は読みやすいので、フランス語初学者でも十分読んでいけると思う。わからない単語がたんさん出てきても、無視してどんどん読み進めれば良いと思うし、そのうちどうしても気になって仕方ない単語が出てきたらその時に辞書を開けば良い。もちろん、全部の単語を辞書で引ける時間があれば、それって最高だけど。
できればGallimard版で揃えたい。このざらついた紙質がたまらない。