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『メッセージ』評

概要

『メッセージ』(Arrival)は、テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を基にエリック・ハイセラーが脚本を執筆し、ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を務めた2016年のアメリカ合衆国のSFドラマ映画(英語版)である。出演はエイミー・アダムスジェレミー・レナーフォレスト・ウィテカーらである。

メッセージ (映画) - Wikipedia

原作は持っているんだけど、未読なので映画が初めてのことになる。ファーストコンタクトもの、言語SF。言語学者の主人公は、突如世界中に現れた宇宙船と思しきものの話す言語の解読を求められる。宇宙船らしきものの中に入ると、その奥には地球外生命体がおり、彼らとの対話を通じて、人類のまだ知らない言語について知っていくことになる。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

サピア=ウォーフの仮説について

映画の中では、この仮説の名前が出てきたのは一度だけだ。しかしながら、時空に対する考え方と物語全体を通している構造には、この考え方が反映されている。時間を線形ではなく、離散的な値として捉えること。これによって、劇中で主人公がなんどもフラッシュバックする「Hannah」という少女が一体何者なのかという秘密が明かされていくことになる。

監督は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ。『ブレードランナー2049』、『複製された男』などの監督でもある。クリストファー・ノーランではない。

さて、SWHの話。

サピア=ウォーフの仮説(サピア=ウォーフのかせつ、Sapir-Whorf hypothesis、SWH)は、「どのような言語によってでも現実世界は正しく把握できるものだ」とする立場に疑問を呈し、言語はその話者の世界観の形成に差異的に関与することを提唱する仮説。言語相対性仮説とも呼ばれる。エドワード・サピアとベンジャミン・リー・ウォーフの研究の基軸をなした。

サピア=ウォーフの仮説 - Wikipedia

この仮説の根幹にあるのは、言語は認識を形づくるので、極端な例を言えば、日本語で世界を認識する方法と、フランス語で世界を認識する方法は異なるのではないか、という主張だ。

よく例としてあげられるのは、日本語では「蝶」と「蛾」を区別するが、フランス語では等しく「papillon」と呼ぶ、というもの。あるいは、「エスキモーは雪を52通りの呼び方で呼ぶ(愛も同じ数だけあるべきだ)」というようなものも挙げられる。識者には、ザクIザクIIは大きく異なっているのだが、それ以外には等しくガンダムに見えるというようなものだ。

ちなみに、蝶と蛾については、papillon de jour, papillon de nuitとそれぞれ綺麗な呼び方がついている。要するに、これらの例は、SWHを対象の解像度の違いとして捉えやすい形にしたもので、飲み込みはしやすいが、本質からは少し離れている気がしないでもない。

ドゥルージアンとベルクソニアンを気取っている織倉未然としては、この仮説の面白さは、外部を思考する指針になりうる、という点にある。

通常、僕らはGEBをある一面で見て満足する。その図形がゲーデルあるいはエッシャーないしはバッハに見える世界平面の上にいて、この対象をゲーデルとして扱うとしてコミュニケーションを取っている。その平面から移動しないなら問題は少ない、しかし現実的には移動しないという道を選ぶのは困難だ。いつの間にか、GがEになったりBになったり、はたまた別のアルファべに変わる世の中にぼくらはいる。

まとめ

この映画を見て、どこまで人々がサピア=ウォーフの仮説から、世界の認識に留保を置いてくれるのか、僕はわからない。ただ、あれはどういう意味だったんだろう、と考える機会になれば良いなと思う。それこそ、ファーストコンタクトものの醍醐味であり、そういう意味でこの映画はとても大事な映画になった。